命を食べるということについて考えさせられた

【エダニクネタバレあります】

エダニクという舞台を観てきた

食肉加工センターの休憩室を舞台に男3人による会話劇

屠殺職人さんと生産農家さんの話

玄田→訳あり屠殺職人

沢村→妻子持ちの屠殺職人

伊舞→生産農家の跡取り息子・少し甘ちゃん

の話

まず最初に屠殺職人達のシーンがあるんだけど休憩室の雰囲気めちゃくちゃ現場の休憩室って感じの雰囲気だった

自分の仕事が現場関係なので慣れ親しんだ空気がまさか舞台上で観れるとは思ってなかった

マジで役者さんすごい

カップ焼きそばの下りでの会話マジで現場でよく居る感じだったわ

そこから伊舞さんが加わるんだけど世間知らずな感じがすごくて何も知らない新人さんなんだなぁって感じた

 

牛の延髄が無くなったっていう事件から話が展開していくんだけど玄田がなんか訳ありなんだろうなぁってのが端々から伝わってくるしそれぞれ己のプライドやら信念がぶつかり合ってて気づいたらその世界に没頭してた

 

沢村の最初ただの新人さんでしょ?って感じから社長の息子ってわかった途端に態度が丁寧になるの大黒柱として妻子食べさせなあかんっていうプライドが見えてよかった

他の2人に比べて人物描写がなんとなく少ないきがしたのに背景が見えてくるのすごいよかった

 

玄田はあんな感じの大阪のおっちゃんおるわって感じやった

あのブチギレたら手がつけられない感じと要らんこと言いなところが大阪のおっちゃんなんよ

あと人情でなんとかしようとするところも大阪のおっちゃんぽかった

 

伊舞のちょっと世間知らずなボンボンなところと愛嬌でなんとかなってきた感すごかった

30までニートで働いたら負けって言えるの社長の息子やからやなぁって思った

あと後半戦に少し見せる狂気の演技が上手い

生産農家だからこその想いとかそういうのが垣間見れるシーンが印象的だった

 

ストーリーの感想はというと

ほんとにどこでも起きそうな人間関係による拗れのドタバタ劇

だからこそ辰巳雄大が言ってた難しい芝居だっていうのが理解できた

 

本当にどこにでもいる人たちの日常生活を覗き見してるようでこれが舞台だという事を見ている内に忘れてた

あと小劇場という規模感もよかった

定員が300人にも満たない小さなホールだからこそ現実味を帯びてた

舞台となる休憩室の狭さや役者同士の距離感

それも相まって

戯曲には戯曲に合った舞台規模があるんだということを改めて実感した

 

屠殺職人と生産農家の立場から見えてるものが違う

それは当たり前なんだけどその感覚の違いってなかなか気づきにくいものでもあるなぁって感じた

感覚が麻痺していくって沢村が言ってたけど確かに人間そういうところあるよなぁって思った

 

玄田の割り切り方や言動が昔ながらの職人って感じだった

ただあんな風に言い合いになる言い方したらそう拗れるわ

 

後半戦にそれぞれの事情が明らかになっていって波乱の展開になっていく

玄田は過去に自分の不注意で怪我させてしまった仲間を庇うために策を練ろうとする

沢村は妻子を養う為に伊舞の機嫌を取ろうとしたり脅したりなりふり構っていられなくなる

伊舞はそんな2人に巻き込まれながらも自分達が育てた家畜の屠殺を面倒くさいとかそういう風に言われて怒って取引をやめる話を持ち出してくる

この3人の思惑の中で繰り広げられる会話がすごいテンポが良くて観ていて面白かった

最初研磨室が休憩室なのは休憩場所が少ないという現場あるあるから来てるんかなぁって思ったらまさかの研磨室だから後半戦の展開が作れるんだ!っていうのを発見した時脚本家すごいって思った

 

最後の後日談で玄田が延髄紛失事件に関わった責任で1週間の謹慎と配置換えになったり

沢村は伊舞がなにもいわなかったから処分されなくて息子が避けてた原因が職業にあったけど息子が理解してくれたっていう

エピソードが本人達の口から語られるのが日常生活そのままって感じでよかった

ただ手作業でする屠殺の見学に来た伊舞が今日屠殺する豚ってうちの豚じゃないですよね?っていうところがまだまだ甘ちゃんやなって思った

わざわざラインに乗せる豚を手作業で屠殺するっていうめんどくさい事絶対しないやん??って思った

 

3人の芝居がすごい濃密で人数が少ないからこそ魅せれる演劇で辰巳雄大が言ってた【勝つ演劇】ってこういうことか!ってわかった

 

この作品もう一回見たいけど大阪の日はボイボイに入ってるから行けないんだよなぁ

なんでこう同じユニットで上演日程被るの?!

しかも1日だけとかほんとオタク泣かせ

 

今回私はこの作品を観るまで食肉加工センターっていう人間にとって絶対に必要な場所の存在を深く考えたことなかったしそもそも食肉がどんな工程を得てるのかを知らなかった

同じ命なのに魚を捌いて切り身にするのは何度も見てきて知っているのに

屠殺というものを見て見ぬふりしてた

枝肉はニュース映像なんかで見たことがあるぐらいだし屠殺がどのように行われてるのかを知ろうとしたことはなかった

エダニクという作品が無かったら多分一生考えることはなかった気がする

 

作中で沢村が丁寧に屠殺工程について説明してくれた

食肉になる生き物たちを屠殺銃で気絶させてその間に首を切り皮を剥ぎ内臓を取り出して真っ二つに切って枝肉という形にするのが屠殺の流れらしい

その中で血の汚れがついたら売り物にならないって台詞があって

生き物が生きてる上で血液は必要なのに血がつくだけで売り物にならないってのは不条理だなぁって感じた

伊舞の会社が手作業で屠殺を行うことに拘ってたのもブランド価値のためだけじゃなくせめて自分たちが育てた家畜は丁寧に屠殺してほしかった

愛情をかけて育てたから屠殺にも愛情を求めるのかなぁって感じた

 

こう考えさせられる舞台をたまには観るのもいいよね

これからお肉食べるときに少し考えてしまいそうだけどそれも含めていただきますなんだろうなぁ

 

個人的におもろポイントが一つあって

2008年の作品だから沢村がガラケー使ってるのがわかるけどYouTubeって2006年に日本語版が出来たけど2008年ごろってもうメジャーなサイトの仲間入りしてたのか分からないけど玄田がしってるのがなんかツボだった

役者さんのアドリブかな?

 

何かありましたらTwitter【@kusa_4usnstjr】まで